R30系日産スカイラインを振り返る =Look back over the R30=
最終更新日 2021/10/9
日本車の歴史上、80年代はやはりエポックメイキングな時代だと感じられます。70年代のアメリカに端を発する排ガス規制問題、続くオイルショックなどクルマにとって冬の時代からようやく脱し、DOHCエンジンの復活、ATの普及、FF車の台頭など現在まで続くクルマのベースが形成され、ともすれば日本車の精緻なメカニズムは世界レベルでも業界をリードするスペックを持つに至りました。
また、バブル景気へ向かうアゲ潮基調にも後押しされていた背景もあり、80年代の個別のクルマには後世に名を残す”名車”が揃っていたような気がします。
引用:https://car-me.jp/
今回のクルドラでは、名車ヒストリーの第一弾として歴代でも名車揃いの日産スカイラインから、1981年にデビューした6代目モデル(R30系)をピックアップし、クルマとしてのトピックをご紹介しながらその魅力を振り返ります。
目次(タップで飛べます)
スカイラインのミニヒストリー
令和の世にもその車名が残る日産スカイライン。1957年の初代モデルデビューから60年以上が過ぎ、数ある日産車の中でも最長の歴史を誇るモデルです。
引用:https://carview.yahoo.co.jp/
ただ一般的にはスカイラインのモデルとしてのトピックは1998年発売の10代目辺りまでで括られることが多く、現在販売されている13代目(V37型モデル)くらいになると果たしてスカイラインと呼べるのか、などという議論はよく聞かれます。それほどに現在のV型ライン以前のモデルはそれぞれが個性的で、個々にご贔屓のファンも多く、そうした背景が「スカイライン」を名車として定義付けています。
今回主役である6代目スカイライン登場までのモデルヒストリーは以下の通りです。
初代から2代目まではプリンス社製のスカイライン、3代目からは日産ブランドになります。その3代目はスーパーモデルGT-Rを擁し、レース等の活躍もあって愛称「ハコスカ」と呼ばれ大人気モデルへと。続く4代目もCM効果と相まって「ケンメリ(ケンとメリー)」のスカイラインとして知名度を上げ、歴代NO.1のセールス台数を誇るモデルとなりました。
6代目R30型スカイラインってどんなクルマ
スカイライン初のターボ車となった通称「ジャパン」と呼ばれる5代目を経て、1981年にR30型の6代目が誕生します。
引用:https://www.sun-a.com/magazine/
歴代スカイラインはCMなどのキャッチコピー等を通じて「愛称」が付けられてきましたが、6代目についてはCMで俳優のポール・ニューマンを起用したことから「ニューマン・スカイライン」と呼ばれました。
型式名も変更し新時代のGTカーを目指す
6代目スカイライン(以下R30)の特徴は、ボディタイプが多いことが挙げられます。4ドアセダンや2ドアハードトップの定番に加えて新登場の5ドアハッチバック、そしてエステート(商用バン)と4つのボディをラインナップしていました。
走りのセダンというイメージは従来と変わりありませんが、それまでスカイラインのアイコンであったボディサイドのサーフィンラインを廃したり、5代目まではホイールベースやボディ全長に違いがあった6気筒モデルと4気筒モデルを6気筒のロング版に統一したり、スカイラインとして新しいフェーズに踏み込んだのがR30です。
また、スカイラインに限りませんが、このR30の世代でフェンダーミラーからドアミラーへと主軸が変わる過渡期にも当たっています。
水平指針でスポーティなメーターパネル
インテリアは当時の日産感あふれる直線基調のデザインで、さすがに今日的な目で見るとプラスチッキーで絶壁型のインパネ。また、エアコンやオーディオを四角いボックスで区切ったような処理も特徴的です。メーターパネルの速度計と回転計の針が0のときは水平になるよう調整されているのは、前モデルから踏襲されていてスカイラインらしいスポーティな拘りを感じる部分です。
時代を感じさせるのはステアリングホイールの種類が2本スポーク、1本スポーク、3本スポークなどモデル毎に変わっていて、合理化が優先される今では考えられない仕様ですね。
R30型の変遷を探る
R30のモデルライフは以下の通りです。モデルチェンジまで6~8年程のスパンとなっている現在の目から見ると、4年サイクルというのは短く感じます。
R30が特徴的なのはエンジンを中心とした、仕様変更の頻度が高かったことでしょう。
81年8月のモデルチェンジ直後は、直4SOHCガソリンエンジン(Z18S型、Z20S型)搭載のTIグレードと直6SOHCガソリン&ガソリンターボエンジン(L20E型/L20ET型)、直6ディーゼル(LD28型)搭載のGTグレードと言うラインナップでした。
スカイラインは伝統的に6気筒エンジンを”GT”モデルとして設定し、4気筒エンジンモデルはファミリーユースという位置づけです。R30からは前述の通りボディ自体は直4でも直6でも共通化しましたが、スカGのアイコンである丸形テールランプのデザインは直4には設定しない等、差別化していた部分もあります。
引用:http://blog.livedoor.jp/
そしてR30系の最大トピックとなるのが、8月のモデルチェンジから2か月後に4ドアセダンと2ドアハードトップに追加設定されたRSグレードの登場です。
世間の評価を一変させたRSシリーズの追加
5代目の”ジャパン”からR30へとモデルチェンジされたとき、基本的にエンジンはキャリーオーバーで、デザイン的にも個性であったサーフィンラインを無くすなど、わりと凡庸になったエクステリアは熱心なスカイラインファンから厳しい指摘もあったようです。
しかしその評価が大きく転換していく契機となったのが、”RSシリーズ“の追加なのです。RS最大のポイントとなるのが、日産としては8年振りとなるDOHCユニット、直列4気筒4バルブの「FJ 20E型エンジン(150PS/6,000rpm、18.5kgm/4,800rpm)」が搭載されたことでしょう。
3、4代目のスカイラインGT-Rに搭載されながらも当時の排ガス規制に適応できず、製造終了となっていたS20型DOHCエンジンの再来として、多くのスカイラインファンは歓喜したと言います。
但し、前述の伝統にのっとり6気筒ではない4気筒のFJエンジンでは”GT-R”と名乗ることは許されなかったため、ブランニューの”RS”(レーシング・スポーツの略)となったわけです。とは言え”R”の称号が復活したのは事実、以降R30系スカイラインの人気、実力ともに中心グレードとなっていくのはRSシリーズとなります。
まぁそもそもR30にはGTグレードが併売されているわけですが、RS人気に押されその影は薄くなりました。
引用:https://web.motormagazine.co.jp/
ちなみにエンジン以外でのRSの特徴は、ボディに黒のツートンカラーが採用されたことやフロントグリルがハニカム形状から3本スリットのデザインに変更された程度です。今で考えれば高性能エンジンの追加となれば、専用のスポイラー等エアロパーツでドレスアップされるのが常ですが、当時は規制があり空力的付加物の装着はNGでした。
4バルブDOHCターボで最強スカイライン爆誕!
8年振りのDOHC、日産初の16バルブと言うことでセンセーショナルに登場したRSの次なるトピックは、83年2月にFJ20E型にKKK製ターボチャージャーを追加したFJ20ET型エンジン(190PS/6,400rpm、23kgm/4,800rpm)搭載の”2000ターボRS”が発売されたことでしょう。
引用:https://www.sun-a.com/magazine/
DOHCターボ自体は既にトヨタが1.8ℓエンジンで製品化していましたが、そちらは2バルブ。4バルブDOHCターボはターボRSのFJ20ET型が元祖となります。
ターボRSは190PSと自然吸気より40PSも高い出力を発揮。この数値は歴代スカイラインのどれよりも高出力であり、メーカー公表のゼロヨン加速タイムも15.5秒で、初代GT-Rの16.1秒を上回り「史上最強のスカイライン」というキャッチコピーが付けられました。
このユニットを用いて日産は”ハコスカ”以来となるワークス体制のレース活動にも復帰し、ほどなくして今につながるNISMOが設立されました。
引用:https://www.sankeibiz.jp/
マイナーチェンジでRSを差別化!鉄仮面登場
ターボの追加は「ようやくスカイラインも本気を出してきたか」とファン層からも評価されましたが、そのわずか半年後にR30系はマイナーチェンジを実施し後期型になります。現在よりもモデルサイクルが約4年と短かったことはあるのでしょうが、現在的な視点からするとどうせならターボ追加とマイナーは同時にすれば?とも思ってしまいます。
マイナーチェンジの内容は、エクステリアではフロント、リヤの意匠変更に大型バンパーを採用したこと。
またRS系のみの変更箇所としては薄型ヘッドランプ、ラジエーターグリルレスのデザインが導入され、その風貌から「鉄仮面」と呼ばれることになります。また、スパルタンな仕様であったターボRSにパワーランバーサポート、パワーステアリング、パワーウインド、カセットオーディオコンポを装備した豪華仕様”2000ターボRS-X”が追加されています。
前述していますが、スカイラインではこのR30のマイチェンに合わせて”ドアミラー”が登場し、しばらくの間フェンダーミラー車と共存していくことになります。
次なる一手!リッター100馬力時代の先駆者となる
矢継ぎ早にターボが追加となり、マイナーチェンジでルックスまで変わって、「これでようやく安心して購入できるぜ」と意気込みマイカーとした方々にはさらなる”衝撃”が加わります。
引用:http://classiccars.dreamlog.jp/
マイチェンした6か月後に今度はターボRSにインタークーラーが搭載された”2000ターボインタークーラーRS/RS-X”が発売となったのです。
通称「ターボC」と呼ばれるこのモデルは、外観上の違いはフロント左下のエプロンにインタークーラーの冷却用開口部が設けられた程度ですが、インタークーラー付きFJ20ET型エンジンのスペックは、グロス表示ながら大台を超えて205PS/6,400rpm、25.0kgm/4,400rpmを発生、当時のパワーウォーズはついにリッター100PSを突破する次元に突入したのです。
引用:http://www.utilitas.co.jp/
憧れるだけの日産ファン、スカイラインファンにとっては次々と出力アップし、ライバルメーカーを負かしていくのは嬉しいことだったかも知れませんが、例えば83年2月にターボRSを実際に購入した人にすれば、わずか1年ほどの間に2度の変更、改良が行われてしまったわけでメーカーには不満の声もけっこう寄せられたとか。
背景にはグローバルな現在と違い、当時の国内市場はとても重視されていて他メーカーに性能で劣る点が出てくれば、即座に手を入れてまた一歩先んじる、が繰り返されていました。これにより80年代の日本車は急激にそのスペックを引き上げていくことになるわけですが、現在の安全装備競争や燃費競争に似た側面がありますね。
鮮烈な赤と黒!R30はスカイラインのオンリーワンに
引用:https://option.tokyo/
R30に設定された”RSシリーズ”は、結局6代目モデルだけで姿を消し、その後のRモデルは7代目2ドアクーペのGTS-R、8代目以降のGT-R復活へと続くことになります。
この一代限りというところが、R30の希少性を高め、以下にご紹介する様々なファクターもあってRSシリーズ、R30系スカイラインは歴代の中でも特に人気のモデルになって行ったのでしょう。
R30はシルエットフォーミュラレースの主役
80年代前半に日本で行われていた人気のレースが、SSことスーパーシルエットシリーズです。
引用:https://www.sun-a.com/magazine/
市販車の外観(シルエット)だけをわずかに残したフォーミュラカー。そうした成り立ちからシルエットフォーミュラと呼ばれました。開催期間はわずかに5年程度のカテゴリーでしたが、当時の日本車の高性能化と相まって多くの印象に残るレースカーが揃いました。
その中でもダントツの人気だったのが「日産ターボ軍団」です。
S110型シルビア、910型ブルーバード、そしてR30型スカイラインが投入され、富士スピードウェイや筑波サーキットでポルシェやBMWのマシンと激闘を繰り広げました。
引用:https://twitter.com/
シルエットフォーミュラを代表するマシンと言えば何をさておいても”トミカ・スカイライン・シルエット”で決まりでしょう。デビューは82年のシリーズ第三戦で、ターボRSの発売に先駆け赤黒ツートンのボディカラーをまとい、フロントやピラーまわりにR30の面影を残しつつ大迫力のスタイルにモデファイされました。
84年までの3シーズンを戦い、タイトルの獲得には至りませんでしたが名手、長谷見昌弘選手のドライビングとその白眉なルックスは大きな存在感を残し、今もシルエットフォーミュラの代名詞的なマシンであり続けます。
引用:https://web.motormagazine.co.jp/
なお、スーパーシルエット終了後の85年に始まるJTC(ジャパンツーリングカー)選手権にも日産はターボRSを主戦車両として投入。86年には鈴木亜久里選手がスカイラインでチャンピオンになっています。
テレビドラマで人気となったR30
クルマ好きにとってR30は説明不要のモデルですが、世間一般でR30を認識させるのに大きな役割を果たしたのが、テレビドラマ「西部警察」でしょう。西部警察は79年から84年にかけて放送された”刑事もの”ドラマです。
引用:https://www.hulu.jp/
渡哲也を筆頭に石原プロモーション総出のドラマでしたが、「太陽にほえろ」的な群像劇と言うよりはむしろ撃つは壊すはのド派手なアクションドラマとしての色合いが強かったです。日本とは思えない市街地での銃撃戦などもウリでしたが、劇中”スーパーマシン”と呼ばれる特殊警察車両等が大暴れする姿に熱中したファンも多かったようです。
スーパーマシンの母体は全て番組スポンサーであった日産車。中でもR30はズバリ「マシンRS」と呼ばれ、発砲する犯人対応のため20ミリ機関砲が2門装備されたり、シグナルコントロールという信号を変えられるトンデモ装置が付いたりと”恐ろしい”設定のクルマでした。何ともすごい時代です。
引用:https://gazoo.com/
ちなみにフェアレディZやサファリなどもスーパーマシン化されていますが、R30も含め撮影用車両を制作したのは、後にオーテックジャパンとなる日産プリンス自動車販売の特販推進室でした。リアルなわけです。
自動車史に記録と記憶を残したR30
スカイラインの6代目R30型は、年間販売台数が10万超えを記録する年もあるほどの人気車でした。時代背景が違うので単純な比較は意味がありませんが、2019年に約9万台売れた日産セレナよりも高い販売台数です(現行スカイラインは年間で1万台以下)。それは当時フルモデルチェンジの直前まで、改良の手を緩めず製品を磨き続ける日産の情熱をユーザーが感じていたからに違いありません。
引用:http://blogs.utilitas.co.jp/
ミニバンやSUV、軽自動車ばかりが売れる現在、今後セダンやクーペが再び隆盛を極めることがあるかは不透明な要素が多く、R30スカイラインなどかつての金字塔は、永遠にその名を残すことになるかも知れません。
以上、クルドラ的名車ヒストリー「R30系日産スカイライン」でした。
新車を安く買うには下取り車を高く売ることがカギ
新車を買うときに、下取り車があるならさらにオトクに購入可能です。
下取り車をそのままディーラーに出してしまうと、相場よりも安く買いたたかれてしまいます…。
査定額の相場を知らなかったばかりに20~30万も損をした人がたくさんいます!
自分の愛車の査定相場を知っておくためには「ナビクル車査定」が最適です。
最大10社の査定が無料で受けられて、しかも入力はたったの45秒で完了。
それでも・・・